自然災害が発生すると、その混乱に乗じた詐欺や悪質商法が横行することがある。被災地に限らず、遠く離れた地域でも発生するため、冷静な判断が求められる。実際にどのような手口があるのか、被害を防ぐための対策と、困ったときの相談先について詳しく解説する。

被災時に狙われる消費者トラブルとは?

地震や台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害などが発生すると、住宅の修理、契約のキャンセル、便乗商法など、さまざまな消費者トラブルが起こりやすくなる。特に以下のようなケースが多く報告されている。

  • 住宅の修理トラブル
    災害で被害を受けた住宅の修理をめぐるトラブルが多発する。例えば、修理業者に依頼したものの施工不良が発覚したり、高額な費用を請求されたりするケースがある。
  • 契約キャンセル時のトラブル
    旅行やイベント、交通機関の利用を予定していたが、災害の影響でキャンセルを余儀なくされることがある。しかし、払い戻しが適切に行われなかったり、高額なキャンセル料を請求されたりする事例が報告されている。
  • 便乗商法や詐欺
    被災者やその支援を名目に、不正な募金活動や投資話が持ちかけられることがある。信頼できる団体かどうかを慎重に見極める必要がある。

住宅修理に関するトラブルの具体例と対策

1. 高額請求や施工不良のリスク

「今すぐ修理しないと危険」と急かされ、契約をしてしまうケースがある。しかし、施工後に修理不十分であることが発覚し、さらに追加費用を請求されることも。

対策

  • 複数の業者から見積もりを取る
  • 事前に契約内容を確認し、納得できるまで契約しない
  • 施工後に不具合があれば業者に対応を求め、納得できない場合は消費生活センターに相談する

2. 火災保険を利用した悪質な修理勧誘

「火災保険を使えば無料で修理できる」と言われ、契約を勧められることがある。しかし、保険金が実際に下りるかどうかは不確実で、業者の言うとおりに契約してしまうと、後で思わぬ費用を負担することになる。

対策

  • 保険会社に直接問い合わせ、請求手続きを自分で行う
  • 保険金を前提にした契約は慎重に検討する
  • 不審な点があれば契約せず、消費生活センターに相談する

被災時の詐欺の手口と見分け方

1. 義援金詐欺

「被災者支援のため」と募金を呼びかける詐欺が発生することがある。実際には被災者に届かず、詐欺グループの資金源になってしまうケースもある。

見分け方

  • 信頼できる団体の公式サイトで募金先を確認する
  • 街頭募金の場合、団体名を検索して実在するか調べる
  • 「今すぐ寄付を」と急かされる場合は注意が必要

2. 劇場型詐欺

複数の人物が登場し、投資話などを持ちかける手口。例えば、「この案件に投資すれば後で高額で買い取る」といった話があり、信用できるように仕向けられるが、最終的にお金だけを騙し取られる。

見分け方

  • 「確実に儲かる」といった話は疑う
  • 知らない業者や個人からの投資話には乗らない
  • 少しでも怪しいと感じたら周囲に相談する

3. 住宅点検を装った詐欺

「無料で屋根の点検をします」と業者が訪問し、その後高額な修理を勧める手口。点検時にわざと屋根を破損させるケースもある。

見分け方

  • 依頼していない業者の訪問点検は受けない
  • 近隣住民に業者の評判を確認する
  • 点検後に「すぐ契約を」と急かされる場合は断る

旅行や交通機関のキャンセル時の注意点

1. 高額なキャンセル料

災害によるキャンセルであっても、契約内容によっては高額なキャンセル料を請求されることがある。

対策

  • 事前にキャンセルポリシーを確認する
  • 旅行保険に加入しておく
  • キャンセル理由を記録し、必要に応じて事業者に交渉する

2. 返金対応が遅い

航空会社や旅行代理店の対応が遅れ、なかなか返金されないこともある。

対策

  • 返金の期限を事前に確認する
  • 事業者と連絡が取れない場合は消費生活センターに相談する

被災時のトラブルに巻き込まれたら?

1. クーリング・オフ制度を利用する

訪問販売や電話勧誘で契約した場合、契約後8日以内であれば無条件で解除できることがある。

2. 最寄りの消費生活センターに相談する

困ったことがあれば、すぐに専門の相談窓口を利用することが大切。

  • 消費者ホットライン:188(最寄りの消費生活センターにつながる)
  • 国民生活センター相談窓口:0120-797-188(特に被災地域向け)

3. 地元の自治体や弁護士に相談する

市役所や区役所に相談すると、適切な支援を受けられる場合がある。また、無料の法律相談窓口も活用できる。

まとめ

被災時は気が動転し、冷静な判断が難しくなる。しかし、その混乱に乗じた詐欺や悪質商法が後を絶たない。
「急かされる契約はしない」「不審な点があれば周囲に相談する」「消費生活センターにすぐ連絡する」など、基本的な対策を心がけることで、被害を未然に防ぐことができる。
大切な財産を守るため、正しい情報を得て、慎重に行動しよう。